
わたしたちジュトクは「地域社会を元気に」を事業の柱の一つに掲げ、全国47都道府県のシルバー人材センター様に安全用品やユニフォームなどをご提供し、シルバー人材センター会員の就業、ひいてはその地域の元気な暮らしを応援しています。
この記事では、あらためて「シルバー人材センター」について掘り下げて考えてみたいと思います。
読んでいただいている皆様は、シルバー人材センター職員様もいらっしゃれば、シルバー人材センターの会員になることを検討されている60歳以上の方、60歳未満だけれど将来を見据えている方、またはシルバー人材センターにお仕事をお願いしようとしている方もいらっしゃるかもしれません。
まずは入門編という形で、簡単にシルバー人材センターについて、紐解いていきたいと思います。
目次:
1.シルバー人材センターとは?
2.シルバー人材センターの仕組み
3.シルバー人材センターでの仕事内容
4.シルバー人材センターで働くメリット
5.シルバー人材センターの利用方法
6.シルバー人材センターと社会への影響
7.まとめ
1.シルバー人材センターとは?

シルバー人材センターは、高年齢者が働くことを通じて生きがいを得ると共に、地域社会の活性化に貢献する組織です。センターは、原則として市(区)町村単位で置かれています。センターは企業や家庭、公官庁からの仕事を受注し、シルバー人材センター会員の中から適任者を選んで、その仕事を遂行します。
日本は高齢化が進む中で、労働力不足が深刻な問題となっています。シルバー人材センターは、これらの課題を解決する重要な役割を担い、高年齢者が社会に貢献しながら充実した生活を送ることを目指しています。
シルバー人材センター事業の創設を振り返るためには、昭和40年代後半までさかのぼる必要があります。
当時は高度経済成長の後、経済激動期を迎えていました。ニクソンショックをはじめとする第一次石油危機等が相次いで起こり、雇用情勢が厳しさを増します。特に中高年齢者にとって苦しい状況でした。当時の定年は55歳が主流。定年後も働く意欲や能力がある中高年齢者にとって、就業への道が非常に狭くなっていました。
そのような背景のもと、定年後の中高年齢者に対する雇用対策の確保が強く求められていきます。また、当時は年金のみで生活を維持することが困難な60歳以上の高齢者の就業対策も課題となっていました。
そして昭和49年、東京都が「高齢者事業団構想」を掲げます。
“その内容は、高齢者が自主的に働く組織をつくり、その組織が受注あるいは開発した仕事を会員である高齢者に提供することを基本とし、会員である高齢者は過去に培われた経験と能力を活用し、働くことを通じての仲間づくりや健康の維持、社会参加の喜びを得、ひいては地域社会の活性化に寄与しようというものでした。”
(引用:引用元は記事最後に記載)
昭和50年2月に東京都江戸川区に日本で最初の高齢者事業団が設立。その後、全国各地に同種の事業団が設立していきます。
こちらが、今のシルバー人材センターに繋がっていきます。
昭和55年度より、国の補助事業としてシルバー事業が行われるようになり、そのタイミングで、各地域において「高齢者事業団」「生きがい事業団」「能力活用協会」など、様々な名称で活動を行っていた団体が、「シルバー人材センター」として統一されることになったのです。
2.シルバー人材センターの仕組み

シルバー人材センターは、上記イラストのような仕組みで運営されています。
1.会員:60歳以上で健康な高齢者が登録し、センターを通じて仕事を受けます。
2.発注者:仕事をシルバー人材センターに依頼する企業、家庭、公官庁など。
3.センター:発注者からの業務を受注し、会員に適切な仕事を割り振ります。
1.会員
会員については、「正会員」「特別会員」「賛助会員」などがありますが、今回は「正会員」についてのみ、ご説明します。
会員になることができるのは、定年退職者等で原則として60歳以上で健康な者、とされています。定年退職者といっても、会社勤めなどではなくても、自営業や家事に従事していた方でも、引退過程や引退後であれば含まれます。
各センターは1つの自治体(市(区)町村)に1センターという原則があります。会員は当該地域に居住していることが必要です。
会員になることで、希望する仕事の登録を行い、センターから仕事の提供を受けることができるようになります。その仕事を行うことで、センターから配分金を受け取ります。
また会員でイベントを催し交流することで、生きがいの充実や社会参加にもつながります。
(詳細は各センターにお問い合わせいただいてご確認ください)
2.発注者
シルバー人材センターは該当地域の発注者(企業・家庭・公官庁など)から仕事を受注します。仕事の内容は非常に多岐に渡ります。公園の清掃、駐輪場の管理・家事支援・福祉サービス・一般事務、etc.
センターは、センターの趣旨及び事業の目的、内容を鑑みながら、仕事の受注を考えて動かれています。ここでは詳細を割愛しますが、民間の事業者ではカバーできない分野の仕事を中心に取り扱っていくことが主になります。
もしお仕事の発注をご検討の方は、一度、ご自分の地域のシルバー人材センター様のホームページを見る、問い合わせしてみる、などがよろしいかと思います。
3.センター
シルバー人材センターは会員自ら運営する自主組織ではありますが、サポートする事務局の体制が重要です。
センター職員などにより構成される事務局が、発注者や会員ともやり取りを行います。
よくお聞きする声として「シルバー人材センターで働く人って皆さん高齢者なんでしょう?」というものがあります。こちらは事務局においては、正しくはありません。
わたしたちは全国のシルバー人材センター様にお伺いしておりますが、若い方もたくさん働いていらっしゃいます。センター様の事務所は、幅広い年齢層の方がいらっしゃり、熱気にあふれていますよ。
3.シルバー人材センターでの仕事内容

シルバー人材センターでの仕事内容は、どのようなものがあるのでしょうか。
こちらについては、読んでいただく方によって知りたい内容が異なってくるのでは、と思いますので分けて掲載させていただきます。
シルバー人材センターに仕事を頼みたい方向け
シルバー人材センターごとに対応できる仕事は異なってきますので、まずはお住まいの地域のシルバー人材センターに直接お問い合わせいただくことが一番とはなります。
「シルバー人材センターで行っている主な仕事」については、下記、公益社団法人全国シルバー人材センター事業協会のホームページに掲載されています。
https://www.zsjc.or.jp/about/about_06.html
多種多様な仕事を行っていることが分かるかと思います。
良く知られている仕事内容としては、「庭木などの剪定」「刃物とぎ」「筆耕・宛名書き」「除草・草刈り」「屋外清掃」「屋内清掃」などがありますが、
他にも「福祉サービス」「育児サービス」「翻訳・通訳」「建物管理」なども挙げられています。
これからシルバー人材センターの会員になりたい方向け
シルバー人材センターは発注者から「臨時的・短期的又はその他の軽易な仕事」を基本的に、請負又は委任の形式により受注しています。
それらを会員の希望や能力に応じて提供しています。
上記でも掲載しておりますが、シルバー人材センターの仕組みは下記の図で説明できます。

上記で「仕事」と記載している箇所が、「請負」や「委任」の形式になってきます。
ここでは「請負」、「委任」について、ご説明したいと思います。
請負契約とは?
民法第632条において請負とは下記のように規定されています。
請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
つまり請負契約の目的は「仕事の完成」となります。仕事を受けた側が仕事を完成させることで、仕事を発注した側は報酬を支払います。
発注者及びセンターと会員の間に雇用関係はなく、発注者およびセンターが、会員に対して指揮命令を行うことができません。
この「指揮命令が行われない」ということが、請負契約のひとつの特徴であるともいえます。
派遣契約の場合は、発注者(派遣先)は派遣された労働者に対して指揮命令を行えます。よって業務の進め方や時間配分など具体的に指示することができます。
ですが「請負契約」の場合は、あくまで「仕事の完成」が目的となりますので、完成に至る経緯について、発注者は指示をすることはできません。
ここで気を付けたいことは、シルバー人材センター側も、会員に対して指揮命令を行うことはできない、ということです。請け負った仕事を行うのは会員になりますので、会員自ら仕事の分担、段取りなどを行う必要があります。
ただ、各業務において会員で「班」などを作っているシルバー人材センターがほとんどかと思いますので、新しく会員になられる方は、それらの班のベテラン会員さんと一緒になって仕事を進めていけるはずです。
●請負契約で行われる仕事の例
庭木などの剪定
除草・草刈り
筆耕・宛名書き
委任契約とは?
民法第643条において委任とは下記のように規定されています。
委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生じる。
委任の特徴は法律行為が含まれている点になります。弁護士などに依頼する業務は法律行為に該当してくるため、委任となります。
そして「仕事の完成」を目的としていない、という部分で請負とは異なってきます。
この委任の他に「準委任」というものもあります。
民法第656条において準委任とは下記のように規定されています。
この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。
シルバー人材センターが取り扱う仕事でいうと、福祉サービスなど仕事の完成があるとは考えにくい業務が当たります。
委任も請負と同様、発注者の指揮命令を受けずに行うものとなります。
ただ、この請負と委任の違いについては分かりづらい部分もありますので、会員になられてお仕事を受ける際、センター職員様に詳細をお尋ねいただければと思います。
●委任(準委任)契約で行われる仕事の例
話し相手・付き添い等の福祉サービス
その他
シルバー人材センターが会員に提供する仕事は、基本的に請負又は委任によるもの、となりますが、「労働者派遣事業」「職業紹介事業」も行っています。
詳細は各地域のシルバー人材センターにお問い合わせいただければと思います。
4.シルバー人材センターで働くメリット

シルバー人材センターで働くことには、多くのメリットがあります。
このパートではそれらのメリットについて考えてみたいと思います。
健康維持につながる
シルバー人材センターで提供する仕事は「臨時的かつ短期的な就業又はその他の軽易な業務」になります。
臨時的かつ短期的な就業とは、連続的又は断続的な概ね月10日程度以内とされています。
軽易な業務とは、一週間当たりの就業時間が概ね20時間を超えないもの、とされています。
また、自分の体力・能力・希望に応じて、仕事を選ぶこともできます。
ですので、適度な時間、また決まったリズムで働くことができます。
適切に体を動かすこと、生活のリズムをキープすることは、健康維持にもつながります。
地域社会とのつながりを得られる
シルバー人材センターで働くことで、会員同士だけでなく、地域の方と触れ合う機会も多くなります。ボランティア活動を通して地域の子供たちと一緒に活動する、会員同士のサークル活動で趣味の幅を広げる、など多様な活動を行えます。定年後、引退後の生きがいを得ることができるのではないでしょうか。
収入も得られる
一定した収入(配分金)の保障は残念ながらないとされていますが、全国平均で月8~10日就業した場合、月額3~5万円程度の収入があるとされています。
※引用:
https://www.zsjc.or.jp/join/join_01.html
収入を得られることで、経済的安定感を得られることもあるのではと思います。家計のため、趣味のため、家族へのプレゼントのため、など、得られた配分金を活用できますね。
5.シルバー人材センターの利用方法

シルバー人材センターの利用方法についてご紹介していきます。
シルバー人材センターに仕事を頼みたい方
基本的にお仕事を依頼したい市区町村のシルバー人材センターに問い合わせをし、申込をします。
公益社団法人全国シルバー人材センター事業協会の下記ページから、最寄りのシルバー人材センターを探すことができます。
https://www.zsjc.or.jp/center/anatano
前述いたしましたがが、各センターによって対応できるお仕事は変わってきます。ただ、センター職員様から丁寧にご説明していただけるかと思いますので、まずは一度お問い合わせされることをおすすめします。
シルバー人材センターの会員になりたい方
お住まいの市区町村のシルバー人材センターに入会することができますので、まずはお問い合わせしてみてください。会員登録会なども随時開催されています。
ただし、以下の条件が必要になります。注意しましょう。
●原則60歳以上の健康で働く意欲のある方
●シルバー人材センターの趣旨に賛同していただいた方
●入会説明を受け、入会申込書を提出した方(理事会への入会申請が必要です)
●定められた会費を納入していただける方
※引用:
https://www.zsjc.or.jp/join/join_01.html
センターごとにホームページも作られていますので、ぜひそちらもご確認してください。最近では、各SNSの活用も進んでいますので、それらを見ると活動の様子が伝わってくると思います。Instagramの投稿チェック、おすすめします。
6.シルバー人材センターと社会への影響

シルバー人材センターは、基本的に各市区町村に1つずつあり、各地域を支えています。
そして、以下のような形で社会に貢献していらっしゃると私たちは考えています。
高齢者雇用の促進
シルバー人材センターは60歳以上の健康で働く意欲のある方が働くことができる環境を整備しています。会員の平均年齢は70代半ばですが、80歳以上でも現役で働いている会員さんを多く拝見しています。
私は取材などで会員さんとお会いするたびに、パワーをいただいています。きっと働くことで元気も出て、新しいことにチャレンジしたいという意欲もわいてくるからこそ、気力に溢れているのだと思います。
現在は、定年60歳制をとりつつも、雇用延長という形で65歳、70歳と働き続けている方も多くなっています。今後は定年年齢の引き上げも考えられます。
シルバー人材センター設立当時とは状況が変化していることは否めません。
それでも、「60歳以上の健康で働く意欲のある方」に向けて環境整備をしているシルバー人材センターは、地域における高齢者雇用の受け皿として、なくてはならないと私は考えています。
地域社会の活性化
シルバー人材センターでは、ボランティア活動なども通して地域に深く根付いています。おそろいの帽子やユニフォームを付けて、ごみ拾い活動などをされている様子を目にしたこと、ありませんか?
また、地域住民の憩いの場所として、カフェや食堂などを独自事業として行っているセンターもいらっしゃいます。
高齢者の方が活き活きと活動している、そんな地域は素敵ですね。わたしたちもそういった方たちのように年齢を重ねていきたい、そう思えるロールモデルとなられているのではないでしょうか。
若い世代のサポート
シルバー人材センターでは、家事や介護の分野でも活躍している会員さんが数多くいらっしゃいます。若いご夫婦で地元以外で子育てをしていて相談場所がない、遠く離れた故郷に住む親の介護をしたいけれど難しい、現役世代が抱える悩みは数多くあります。その悩みに寄り添い、手助けしてくれるのもシルバー人材センターではないでしょうか。
このように、シルバー人材センターは高齢者だけでなく、地域社会全体を支える重要な仕組みとなっています。
7.まとめ
シルバー人材センター「入門編」として、ご紹介してきました。
設立の経緯から、一般の皆さんがあまりご存じではない、シルバー人材センターの仕組みについて、なども掲載させていただきました。
全国同じ組織とはなりますので地域によって大きな違いはありませんが、受けられる仕事の内容などは各センターによって多少違いがあります。
また最近では、会員数不足も叫ばれており、人気の「除草」業務などは、初夏のシーズン開始とともにその年の受付が終了してしまう、というセンターも目にします。
ですので、各センターにとって「会員募集」も大切なミッションとなっています。
わたしたちは、多くの皆様にシルバー人材センターの大切さをお伝えしていく活動を通して、各地のセンターと地域の方の出会いを創出することができればと考えております。
今後ともよろしくお願いいたします。
※今回の記事は、下記書籍を参考に作成させていただきました。また一部部分は引用させていただいております。
●シルバー人材センター事業 運営の手引き
編集・発行人/公益社団法人 全国シルバー人材センター事業協会
●シルバー人材センター適正就業の手引
編集兼発行者 公益社団法人 全国シルバー人材センター事業協会
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